片目は開けて眠る

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用の美

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去年の11月、日本民藝館で買った芹沢銈介のカレンダーを収めてみた。のだが、昭和59年に亡くなっている人間が平成28年のカレンダーをつくったとも思えない。ただ単に絵だけをはめ込んだカレンダーではなく、数字そのものから全体をデザインしているものなので、このあたりどうなってんのだろうか。

 

大正時代に「民藝運動」というものがあり、日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出し、それまでの美術史が正当に評価してこなかった、西洋的な意味でのファインアートでもなく高価な古美術品でもない、無名の職人による民衆的美術工芸の美を発掘し、世に紹介することに努めた、とある。

 

この考え方って少し90年代のオルタナティブというか、いわゆるカウンターカルチャーの概念に近いものを感じている。当時の空気感として、いわゆるロックスターでもない人間が楽器を持ってライブをしていく、そしてシーンが形成され、文化が産まれていくあの感じ。あの時代の空気の揺さぶりが好きだった。自分たちで作っている小さいレーベルやファンジンがいくつも在って、いろんなバンドが発表されていった。個人のつながりが大きな波をつくりだす揺さぶりが、私が本当に好きな理由だったのだろう。その揺さぶりを感じるために、音楽が、スラッシュメタル/ハードコアが生活の中にあった。私にとっての用の美なのだ。